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比屋定篤子 2004/01/11

never ending interview

 シンガー・ソングライター比屋定篤子の約4年ぶりのニューアルバム「ひやじょう」が、2月20日にリリースされた。
 この4年の間に、沖縄に活動拠点を移し、結婚と出産を経験して、その歌には大きくて優しい包容力が備わったようだ。今回のアルバムでも、ショーロクラブの笹子重治をはじめ第一線で活躍しているミュージシャンが大挙サポートしており、彼女がいかに期待されているのかがわかるようだ。
 出産4日前(1月11日)、滑り込みで話を聞くことができた。


あまりに世間知らずなところもあった。

●前のレコード会社との契約が終わったのは、いつ頃ですか。

「99年の12月に『ルア・ラランジャ』が出て、2000年の3月ですね」

●その時は、どんな気持ちだったんですか。

「漠然とはありましたけどね。どうしようっていうのはなかったですね。実際売れてなかったから、そうなるのは自分でもどこかでわかってたと思いますね。ただ自分自身で地道に続けていくことが大切なんじゃないかと思っていました。いいミュージシャンとの出会いが沢山あったし、どうにかなるかなぁと思っていて、あまり悲観はしていなかったですね」

●出会いというのは…。

「ハシケンさんのコーラスでレコーディングに呼んでもらったり、リクオさんのイベントに呼ばれたり。私自身も笹子(重治)さんとコンスタントにライブ活動をやってましたからね」

●大きなレコード会社に所属していると、アーティストとしても、セールスとかいったことは気になるもんですか。プレッシャーがあったりとか。

「ないと言ったら嘘ですよね。でも、レコード会社の人は、アーティストに対してはっきりとそういうことを言わないじゃないですか。私から興味を持って聞くこともなかったし。今となれば、あんまり地に足がついてない音楽活動だったのかもしれないし。
逆にもっとそういうことを知ってプレッシャーとかを感じていた方がよかったのかもしれないし。3年間とても大切にしてもらったんですけど、今振り返ると、あまりに世間知らずなところもあったと思うんですよ」

●難しいですよね。

「そうですよね。誰がどういう形で売れるとかわからないですからね」

帰郷、出産、子育てを通じて作風にも変化が。

●沖縄に戻ったのは、いつですか。

「2001年の4月です」

●定期的にライブはやってらっしゃいましたけど、曲作りはどういう風にしてましたか。

「笹子(重治)さんとか小林次郎と、曲のやりとりはしていました。詩を書いて曲をつけてもらったものもあるし。今回アルバムに入った『夕日の唄』とか『ウクレレラブ』は、その頃できた曲ですね。ペースは東京にいた頃に比べると、すごく遅くなりましたね。笹子さんとはオムニバスCDの話とかもあって、5、6曲まとめて送っても
らって詩をつけたりしていましたね。
 その後すぐに、結婚して子どもができて、日々の生活が占めるウエイトが大きくなったこともあります」

●沖縄に戻って、作風というのは変わったと思いますか。

「これといって、言葉にできるほど自覚はないんですけど。大きくここがこう違うとは言えないんですけど、やっぱり視点が少しは変わったかもしれません。子どもを産んだのが一番大きいと思うんですけど。
 東京にいた頃は、詩にしなければいけないみたいな意識が強くて、ある程度形作るような部分はあったかもしれない。今でもそれが完璧に取り払われたわけではないんですけど、言葉が素直に出てくるような感じというのは、親になったからなのかなぁと思いますね」

●どうしても母親としてのウエイトが大きくなってくるわけなんですけど、アーティストとして活動していく上でのジレンマみたいなことはないですか。

「それは、すごく刹那的にすぐに過ぎ去っていくんですけど、その場その場であせることはちょっとありました。聴きたいCDが聴けないとか、子どもが泣いたりとか。生まれた最初の頃はあったんですけど、今はそれも含めて、空いた時間を自分の時間にあてればいいやぁとか。自分のこと以外に考えなければいけないことが増えてきたし。
それは時間とともに慣れてきて。まぁ、人生80年だし、私が何歳まで生きられるかわからないけど。子どもを育てる時間というのはとても大切ですからね。決して歌をうたう上でもマイナスになるわけないし。そんな風に思えるようになりました」

ライブで歌ってきた曲を集めた新作「ひやじょう」。

●今回のレコーディングの話はいつ頃からあったんですか。

「ハピネスレコードでやりましょうというのは、去年(2003年)5月に東京でライブをやった時にはほとんど決まっていました。顔合わせみたいなこともしましたし。プロデューサーの田中さんとも面識があったし、今までのCDも聴いてもらっていて、いつかやれたらいいですね、って話をしていたんです」

●収録された作品は、ほとんどライブで披露されてきたものですよね。

「そうですね。今まで随分出てなかったんで、ライブだけで歌ってきた曲が中心ですよね。ライブでお客さんに書いていただいたアンケートの中に、この曲はCDに入ってないんですかっていう嬉しい意見とかもあって、そういう意味で、音源になっていない曲を録音出来たらというのは前々からありましたね。
 『甘辛メロディー』とか、作ってから随分時間がたったものもあったんですけど、そういう曲も録音できて嬉しかったですね」

●当初、録音は東京で行う予定だったんですよね。

「そうですね。録音がほぼ決まった6月頃に妊娠がわかったので、どうなるかなぁって思ったですけど。事務所とレコード会社に相談したら、CDを作る方法は変わってくるけど制作する時期は、今が一番いいと思うからって言ってくれて、実現したんです」

●沖縄での録音は、去年の7月と9月でした。

「そうですね。7月は笹子さんのギターと歌を録りましたね。それに(福和)誠司クンのパーカッションを入れて。ベースとなる音を録るつもりだったんですけど、そのままその時の歌が活かされたのもあります。割と、笹子さんとのデュオで出来てきた作品が多かったんで、デュオの音をベースにして、ほかの楽器を重ねてもらうというパターンが結構ありましたね。これまでにもそんなパターンが結構あったんで、そんなに違和感がなかったですね」

●自分がいないところで、ほかの録音の作業が進んでいくというのは、どんな気持ちでした?

「それはやっぱり寂しかったですね。基本的にアレンジを自分でまとめたことはなくて、これまでもそばで見ていたんですね。今回はそれすらもできなかったですから。意見が言えないというよりは、その過程を自分で見た方がレコーディングは楽しいと思いました。見届けたい気持ちが強かったから、可能なら立ち会いたかったですね。笹子さんのアレンジについては、これまで一緒にやることが多かったので、想像できない音ではなかったんですけど」

saigenjiと初めての共演。

●今回は、saigenjiさんと共作した曲もありますよね。

「saigenjiさんは、まわりのミュージシャンに知りあいも多かったんですけど、直接話ができたのは去年が初めてなんです。あれだけギターが弾けて歌える人って、そうそういないですよね。すごく自由自在な人だし。
 でも、いただいた曲はすっごく難しかったですね。これまでに、こんなに音域が広い曲ってなかったし、メロディーも微妙だし。音をもらってから録音の時まで練習ができなかったので、不安でしたね。私無理してなかったですか?(笑)多分、saigenjiさんも気に入ってないはずなぁって思って聴いてたんですけど」(笑)

●全然、そんなことないと思いますけど。曲はすごくsaigenjiチックな感じですよね。

「そうですね。詩は私が書いたんですけど、非常に前向きなストレートな感じになったんで。
saigenjiさんは、もうちょっと含みを持たせたような詩の多い人だと思うんですけど、仕上がりとしては、素直に私が思ったことを出せたと思うんですけど」

自分でも満足のいく仕上がりに。

●「ひやじょう」というアルバムのタイトルです。

「私の中での第一候補は『薄桃』だったんです。この曲が一番等身大で、自分も知らない自分が生まれてきた、とても好きな曲だったので。
 でも、4年ぶりのアルバムということもあって、曲の名前じゃなくて、今の私自身のすべてを出して、包み込める名前であって欲しいということで『ひやじょう』というタイトルになりました」

●仕上がりを通して聴いてみて、いかがですか。すごくいいアルバムだと思いましたけど。

「詩がすごく等身大に近づいてきたと思いますね。形作るのではなくて、自分らしい詩になってきたとすごく感じます。歌は、余計な力みが入ってないですよね。これは沖縄でボーカル録りをできたのが大きいかもしれませんね。ミュージシャンも素晴らしいし、全体にいい仕上がりになったと思います。デビュー当時は、出来上がったCDを聴くと、すごく恥ずかしさみたいなものがあったんですけど、それはなくなりましたね。もちろん今までも嘘をついていたわけではないんですけどね」

●リリースと出産、おめでたいことが、ほぼ同じ時期に重なりました。

「やっぱり、アルバムが出た時にライブをできないというのは非常に申し訳ないですけど。妊娠がわかっても、この時期がベストだということで力を貸してくれた人も多いんで、今は自分がやれることをやっていくべきだと思うし、一段落する夏以降からは、人の前に出てライブをやっていければいいなぁと思います」

■「ひやじょう」比屋定篤子

(ハピネスレコード/2004年2月20日発売/2520円)
<収録予定曲>
心溶かして
乙女ノックアウトナイト
風のまつり
甘辛メロディー
夕日の唄
君を照らすよ
ウクレレ ラヴ
薄桃
さらさら
月の宝石

■プロフィール
ひやじょうあつこ。那覇市出身。1997年にソニーミュージックからメジャーデビュー。3枚のアルバムを発表する。南国の空気をたっぷりと含んだサウダージボイスと知的で都会的なメロディー&ハーモニーが一つになり、独特の世界観を作り上げてきた。2001年、結婚と出産のために帰郷。2004年2月に新作「ひやじょう」を発表。

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