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トランジットパス
vol.11 アンカラへ。
Trabzon〜Ankara,Turky Feb. 1998

 イスタンブールからトラブゾンまでは飛行機を使ったが、帰りは陸路で戻ろうと思っていた。黒海沿岸に沿ってバスを乗り継ぐルートもあったが、一度アンカラまでバスで出て、そこから列車を使おうと考えた。

 いくつかバス会社もあるようだったが、ウルソイというバス会社が信頼がおけるということだった。このバスの事務所は街の真ん中のメイダン公園の近くにあった。空いていれば明日のバスにでも乗りたかったが、あいにく満席で明後日の朝の便を予約した。

 アンカラまでは約13時間。バスの出発は午前7時。順調に行っても夜8時にしか着かない。時間通りにメイダン公園近くの事務所を出たバスは、市内のいくつかの乗り場で客を拾い満席になって街を離れた。地方都市と首都とを結ぶ、数少ない交通手段だけに満席になるのもうなずけた。

 最後のバス停を出ると客室係の男が瓶を手にやってきた。隣りの男の子を見ると、客室係が差し出すものを両方の手のひらで受け取って顔や首筋につけている。僕も同じように両手を差し出すと、男は2振りほどその瓶から液体を垂らしてくれた。香りには好き嫌いがあるものだが、決して悪くない、いい匂いが広がった。これはコロンヤというそうだ。オーデコロンみたいなものだろうか。国際線の飛行機で配られるおしぼりのようなものと理解した。

 サムスンという街までは黒海に沿って進む。僕が座った右側の車窓には、どんよりとした海が広がっている。時々顔をのぞかす陽の光の変化が様々な海辺の表情を見せてくれる。浜は黒い石ばかりかと思えば茶色の浜が見えたりもする。沖には数え切れないほどの海鳥が飛び交っている。

 隣に座った中学生ぐらいの男の子は、知らない国の男に興味深々だった。ガイドブックの後ろの方についた会話集をつかってアハメッドという名前を教えてもらった。

 バスは、サムスンの手前のドライブインに入った。ここで昼食らしい。アハメットの話では、ここで40分間停まるらしかった。何百人も収容できるような大きな店内はガランとしていた。駐車場を振り返ると、停車しているのは僕が乗ってきたバスだけだった。朝から何も食べていなかったので、その店で2、3品適当につまんだ。平均的な味だが、空腹は満たされた。

 バスはサムスンから内陸のアナトリア地方に進路をとる。小1時間も行くと風景は一変した。荒涼とした風景が広がり道路の両端には雪が残っていた。

 そんな折り、車内ではティーバックのチャイがふるまわれた。通路をはさんで座ったアハメッドの母親がお菓子を分けてくれた。形はギョウザだが味はシナモンフレイバー。中にはブルーベリージャムが入っていた。甘くなくて美味しかった。母親は容器いっぱいにこの菓子を持っていて、周囲の客にも配っていた。

 17時。コルムという町の近くで2度目の休憩。約15分間。アハメットは僕の時計を指して7時頃には着くはずだと教えてくれた。汚れた野良犬がつきまとってうるさかった。ほとんど陽は落ちて夜の闇が迫っている。気温は低く足元から冷気がしのび込んでくる。

 バスはまた走りはじめた。僕はほどなく眠ってしまったようだった。車内のザワつきに目を覚ますと窓の外の風景はそれまでと違っていた。どうやらアンカラに着いたようだった。時計は7時を過ぎたところだった。

■アシアナ航空のソウル〜イスタンブール線が、コードシェア便ながら、毎週火曜日ソウル発/土曜日イスタンブール発で復活した模様。沖縄からの往路はソウルで1泊必要。

(2002年2月、おきなわJOHO掲載)



 

 
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