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トランジットパス
vol.4 ロード・トゥ・シェムリアプ。
Phnompenh to Siemreap,Cambodia Apr.2001

 プノンペンからアンコールワットのあるシェムリアプへの移動には、スピードボートを使った。

 バイクタクシーの兄ちゃんに「すぐにいっぱいになるんだよ」と言われて、プノンペンに着いた日に、チケット売場まで連れて行ってもらった。片道US22ドル。高いのか安いのかわからない。ガイドブックには、早朝に頻発していると記されていたが、船は朝の一便だけだった。

 出発の日、朝8時までに来てくれといわれてたので7時前に目を覚ました。宿から船着場までは車で15分ほど。陽が高くなる前の熱帯の街の朝の静謐さ。プノンペンの街にも、心地よい空気が充満していた。

 早朝の船着場は、そこだけ活気にあふれていた。大勢群がる物売りから朝食代わりのフランスパンと水を買って船に乗り込む。街の様子からは、この国がかつてフランスの植民地だったと伺える材料は少ない。だが、このフランスパンを一口食べれば一発だ。それだけ完璧に近い。

 船は想像したよりもずっと小さかった。船室には一応椅子はあるが、電車のように壁際に長いベンチが置いてあるだけ。中央にもベンチが置かれていたが、中はすでに満席、しかも暑そう。船の屋根の上には西欧からのバックパッカーが鈴なりの状態。私は、かろうじて空いていた最後尾の縁に腰を下ろした。その後からも続々と人が乗ってくる。完全な定員オーバー。そばに座っていたマレー人のおじさんと顔を見合わせてため息をつく。この状態で5時間も船に揺られることを考えると、出発前からすでにウンザリする。

 外国人旅行者でいっぱいのこの船は、一時期ポルポト派の残党の格好の標的になっていたという。一番最近では昨年襲撃を受けて、乗客の金品がごっそり持っていかれたとか。確かに彼らの年収の何倍もの金を持った外国人がわんさか乗った船は、宝船に見えても仕方がない。そんな心配も頭の片隅にあったのだが、自分だけは大丈夫という理由なき自信と、湖からの眺めを楽しみたいと思って、船を選んだのだった。

  船はトンレサップ湖を北へ向かう。この湖は東南アジア最大で、雨期には3倍の大きさになるという。今は雨期の直前だから、一年で最も水の量が少ない時期のはずだ。この湖から流れ出るトンレサップ川が、プノンペンの市街を流れている。乾季のせいか湖の入口と思われるあたりまでは、随分時間がかかった。フルスロットルで川を遡るボート。両岸に浮かぶ集落を通過するたびに、波が打ち寄せて、家を大きく揺らす。湖はとにかく広い。沖に出ると360度水平線が広がるほどだ。

 シェムリアプでは、乾季で水かさがないため、沖の方で小さなくり舟のハシケに乗り換えて岸へ向かう。ハシケの乗組員と思っていた若い男は、バイクタクシーの運転手だった。

  「雨期だともっと街の近くまでつけられるんだけど」と男が言う。ここから市街までバイクでさらに40分だという。「嘘だろ!?」。舗装などされているはずもなく凸凹道をバイクタクシーは丁寧に進んでいった。付近の村は見るからに貧しそうな様子。貧しいというよりも、昔のままの暮らしを続けているという印象か。時々すえた臭いを嗅いで思わず息を止めてしまう。本当にここがアンコール遺跡の入口なんだろうか?

 そんなことを考えているうちに、バイクは市街地に入っていった。

■バンコク〜プノンペンの航空運賃は、片道ノーマルで1万7000円くらい。ビザは空港や国境で取得可能。US20ドルと顔写真が必要。プノンペン〜シェムリアプ間の移動には、飛行機のほかスピードボートやトラックがある。

(2001年7月、おきなわJOHO掲載)



 

 
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